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【林ゼミ】外務省在外公館派遣員としてアフリカ連合日本政府代表部(エチオピア)へ派遣された、商学部貿易学科の卒業生(林ゼミ)から現地報告が届きました。

 商学部貿易学科卒業生(2024年3月卒)の雨森と申します。現在、外務省在外公館派遣員制度を通じて、エチオピアにてアフリカ連合日本政府代表部という組織で勤務しております。本記事では、皆さんに現地での暮らしや仕事について、ご紹介できればと思います。

 冒頭でも述べたとおり、現在、私はアフリカ連合日本政府代表部で派遣員として勤務しています。あまり聴き馴染みのない組織だと思いますが、日本政府代表部とは、簡単に言えば大使館や領事館と似たような組織です。縁があり、代表部に所属させていただいていますが、在外公館の多くは大使館、領事館なので、派遣員も通常はそれらで勤務することが多いです。派遣員の業務は様々ですが、業務を大きく分けるとすれば、デスクに座って行う「事務業務」、オフィスの外で行う「現場業務」の二つだと思います。

「事務業務」では、主に、上司の出張や、日本および第三国からの出張者を迎える際のホテル、フライト、車両の手配などを行います。現地の業者とメールや電話でやり取りをし、出張者が滞りなく業務を遂行できるように準備を行います。

「現場業務」では、出張者がエチオピアに到着した際に、空港まで迎えにいき、ホテルまで送迎します。出張最終日には、出張者をホテルから空港までエスコートし、スムーズに出国できるように支援します。出張者の職位によっては、滞在中の全行程に同行し、各訪問先への移動を、運転手と連携してサポートすることもあります。時には、駐停車禁止の場所やすでに他の車両が停まっている場所に車を配置させておくように依頼されることがあり、警察や市民に交渉してなんとか停車スペースを確保する場面もあります。

「なんでもやります」という精神のもと、さまざまな業務に携わりましたが、特に印象に残っているのは、イタリアで開催されたG7サミットにおいて、取材協力班として応援出張に行った経験です。日本から来た記者たちを首脳会談の会場へ案内し、取材や撮影のサポートをしました。その中で最も感銘を受けたのは、岸田総理を含むG7の各国首脳がわずか10メートル先にいるという、非常に貴重な体験を間近でできたことです。派遣員として働いたからこそ得られた、かけがえのない経験だと思っています。

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 つぎは、現地での「食」と「住」を、皆さんに紹介させていただきます。エチオピアの代表的な料理として挙げられるのが、主食とされているインジェラという伝統料理です。初見で食欲をそそられた方は少数かもしれません。ネット上では「見た目は雑巾、味は…」と表現されているのを見かけたこともあります。日本から来た出張者とインジェラを食べに行った際に、おしぼりと間違えて手を拭こうとしていた光景がおかしくて今でも印象に残っています。現地の人々は、ほとんど毎日インジェラを食べていますが、私自身はインジェラが苦手なので、普段は自炊したり、外食で中華やイタリアンなどの馴染みのある料理を食べたりしています。エチオピアに来られる際や日本にエチオピア料理店があれば、是非一度試してみてください。食に関して困ることといえば、食材の調達です。自炊をしていると先ほど述べましたが、現地で手に入る食材は限られており、物足りなさを感じることもしばしばあります。もともと国内で生産されている食材も豊富ではなく、加えて政府が行う外資規制が非常に厳しいため、輸入品も簡単に入手できません。そのため、隣国のケニアやジブチに行き、肉やパスタ、乳製品、お菓子などを購入し、エチオピアでの食生活向上に繋げています。

             (ロール状のインジェラ(右側)と生肉)      (インジェラと肉とスパイス) 

 住環境についてですが、エチオピアでは治安面に不安があることは否めません。幸いにも、私はこれまで被害に遭ったことはありませんが、私の上司は過去に、エチオピア人3人に背後から羽交い締めにされ、金品を強奪されるという被害に遭ったことがあります。そうした治安状況も考慮され、派遣員制度の家賃補助を受けて高セキュリティ・高設備のアパートに住んでいます。正直、新卒が住む住居にしては、豪勢な家で暮らしています。とはいえ、高セキュリティ・高設備のアパートに住んでいても、停電や断水が1日に複数回起こることもあり、インフラ整備の不十分さを常々感じます。

 現地の生活で特に印象に残っている出来事があります。ある日の仕事終わり、上司と飲みにでかけ、3次会まで長引き、気づいたら23時頃になっていました。帰ろうした時、見た目小学生にも満たさない少年が私に近づき、「タバコを買わないか」と声をかけてきました。路上で物を売っている子供でした。「要らないよ」と返すと、少年は「では、僕が吸う分を一本買って」と言いました。大学時代に文献で読んだようなシーンを実体験し、衝撃と同時に胸が痛みました。結局、タバコは買わずに、100円ほどのお小遣いを渡すと、少年は笑顔で去っていきました。後々、周りのエチオピア人の話を聞くところによると、「僕が吸う分を一本買って」という言葉には、主に二つの意味が込められていることに気づかされました。一つ目は、空腹を紛らわすためにタバコが吸いたいということ。二つ目は、タバコが売れなかったら、帰ってお母さんに怒られるプレッシャーを背負っているという背景でした。エチオピアに来て1ヶ月ほどで、人々の厳しい生活状況を目の当たりにした経験は、強く印象に残っています。

                        (タバコ売りの少年と私)

 このように、派遣員制度を通じてエチオピアに来た経験は、自分にとって大きな財産となりました。在学生の皆さんにとって、将来の進路やキャリアについて考えることに悩んだり、行き詰まったりすることもあるかと思います。学生のうちに、自分がどのようなキャリアを歩みたいのか、自分に合った仕事や職種は何なのかをじっくりと考え、準備をすることが大事だと思います。本記事が、皆さんの進路を考える上で少しでも参考になれば幸いです。

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