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[経営学科]学生ライターによる授業レポート_経営基礎ゼミナールⅠ(その3_妙心寺退蔵院 松山大耕さま)

7月6日(水)の経営基礎ゼミナールⅠではゲストスピーカーを招いた講演会が行われました。今回のゲストスピーカーは妙心寺退蔵院副住職の松山大耕さまです。

松山さまは生まれたときからご実家のお寺を継ぐことを期待されていましたが、そういった人生に反抗されていました。しかし、大学時代に托鉢のみで生活されているお坊さんに出会い、お寺に入ることを決意されたそうです。

禅宗の修行は3年以上もかかります。本、携帯電話、エアコンもなしで毎朝3時に起きなければならない厳しいものです。その厳しい修行の中で実践体験から気づきを得ることの重要性を学んだそうです。

実践体験の学びを重視するのは禅の特徴です。物事を理解する場合「聞(教えを聞くこと)」「思(聞いた内容を自分で考えること)」「修(実際にやってみること)」の3つの段階があります。一般的には聞思修の順で行いますが、禅では逆に修思聞の順で行います。修から始めることで学びが深く身に付くのです。

たとえば禅寺での食事の給仕係は1~2年目の修行僧が行いますが、何をしても頭ごなしに怒鳴られるそうです。「胸元が乱れている」というわかりやすい指摘から、「もっとぐーっといけ」という抽象的なものまでさまざまな内容です。私ならつい正しい所作から教えてくださいと言いたくなってしまいます。しかしそれを続けていくと立ち居振る舞いやまとっている雰囲気が変わってくるそうです。人から人への影響は言葉が2割、雰囲気が8割といわれています。この8割を占める雰囲気に、修思聞による修行は影響を与えるのです。

近年社員研修を禅寺で行う企業が増えていることをご存じですか?研修では実際の修行と同じように早朝から座禅、お寺の掃除、写経などを行います。これらの内容は一見ビジネスとは関係がないように思えます。では、なぜいま禅寺での学びが注目されているのでしょうか。

その意味の1つ目は「場所が変わること」です。お寺に行くと背筋が伸びるような感覚がありますよね。日常とは違う環境に身を置くこと自体に心構えを変える効果があります。

2つ目は「長く続ける秘訣を学べること」です。企業の平均寿命は年々短くなってきているといわれています。それに対してお寺は何百年も続いていることが多いです。妙心寺は650年も続いています。そこで長く続ける秘訣を学びたいという企業が多いのです。

私の印象ですが、企業とお寺は価値観が違うのではないでしょうか。企業は短期的に利益を出すことが求められますが、お寺は長期的に伝統を受け継ぐことに重きを置いています。異なる価値観に触れることで、長期的な視点が欠けていたことに気が付くことができるのではないでしょうか。

3つ目は「感性を磨けること」です。禅の修行ではいわゆる「ながら○○」をしません。座禅のときは雑念を振り払って精神を統一させ、食事のときは喋らず味わうことに集中します。集中することで五感が研ぎ澄まされ、感性を磨くことができるのです。

感性を磨くことはビジネスにも私生活にもメリットがあります。

ビジネスでは完成度の高いものを作る決め手を与えてくれます。たとえば、従来の携帯電話と全く違うiPhoneを作りだしたスティーブ・ジョブズも禅の影響を受けたと言われています。近い将来AIに人間の仕事が奪われると言われていますが、データから生み出されたものが人間の心を掴むことができるのでしょうか。人間の心を動かすような完成度の高いものを生み出すには、作り出した本人が「これが良い!」と信じて作るのが重要であり、それには感性を信じることが必要なのだと思います。

私生活では他人に振り回されず、自由に生きられることです。「自由」とは仏教用語では「Liberty」や「Freedom」ではなく「自らに由る(よる)」ということを意味しています。自らに頼る、つまり、自分を拠り所にすることを意味しています。本来の「自由」とは任に好きなことをするという意味ではありません。自由に生きられていないと感じるのは自分の気持ちを無視して周りに合わせている時ではないでしょうか。自分の感性を信じて、自分自身を頼りにすることで自由に生きることができるのです。

松山さんの講演以前は、禅に難しく近寄りがたいイメージを持っていました。しかし日常生活に取り入れられそうな考え方が多く、特に知識を得るだけでなく実践から学ぼうとする姿勢は取り入れていこうと思いました。

取材・執筆 Student Assistant 商学部経営学科3年 星七海

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