MaCOP 福岡大学商学部

ゲームを分析する方法を集めてみました

1期生 高野

1.はじめに

皆さんは、おもしろいゲームに出会った時に「そのゲームはなぜおもしろいと感じるのか?」「このおもしろさはどこから来ているのか?」と気になったことはありませんか?
現代では、このようなものをはじめとするゲームに関する様々な問いを明らかにするために「ゲームを分析する」という手段がとられています。
そこで今回はタイトルの通り、ゲームを分析する方法を集めてみました。世に出ているゲームの分析法を見て、開発者の方はどのような手順や視点で分析しているのかを紹介していきたいと思います。自分がハマっているゲームのおもしろさを理解したい人や、ゲームを分析してみたい人などに向け、少しでも考えのヒントになればと思います。

 

 

2.現在Web上で公開されているゲームの分析方法

では早速、公開されているゲームの分析法を見ていきましょう。今回はwebを対象として調査しました。今回の方法の中には「ゲームの分析」を主旨としたものではないものもありますが、分析に何らかが役立つものとして紹介していきたいと思います。

2.1 ゲームデザイン手段目的/快感ストレス分析シート 中村隆之氏


『もじぴったん』シリーズのプロデューサー、ディレクターを務めた中村隆之氏が作成したゲームデザイン分析のフレームワークです。この方法は、ゲーム内を手段と目的(ゴール)から成る構造ととらえ、それらの要素のどこにどのような快感やストレスが発生するかに着目して分析するというものです。また、方法を説明するにあたって、ゲームデザインを分析することの重要性や、なぜこのようなフレームワークが必要なのかという点まで語られています。このゲームデザイン手段目的分析シートとマニュアルは中村氏のブログで公開されているので、実際にこのフレームワークを活用してみてはいかがでしょうか。

【セミナー】ゲームデザイン分析の必要性…『もじぴったん』中村隆之氏が登壇したDeNA主催「座・芸夢 若手ゲームプランナー育成塾」を取材

ゲームデザイン手段目的分析シートおよびマニュアルを公開します

2.2 MDAフレームワーク マーク・ルブラン氏


ゲームの本質をゲームの根本的な仕組みである「メカニクス」、プレイヤーの操作による展開である「ダイナミクス」、プレイヤーに生まれる感情を示す「アスセティックス」という三段階に分け、それぞれを言語化することでゲームデザインの評価や分析、研究として活用するものです。ゲーム単体で行うのもよさそうですが、似たようなゲームで比較して行うのも、よりそれぞれに対して明確な分析が出来そうで良いかもしれません。
MDAフレームワークに関しては、その有名度から課題を指摘したものや、課題を解決するための新しい理論も生まれているのでその辺りも合わせて調べてみることをおすすめします。

アナログゲームを通してMDAフレームワーク理論を学ぶ「MDAワークショップ(初級編)」体験レポート

2.3 主体性構造モデル 井戸里志氏


「ゲームの楽しさ」とは一体どういったものなのかについて考える理論です。ゲームには「主体的楽しさ」が生まれるものであるとし、ゲームの楽しさを様々なタイプによって分類し、さらに「楽しさの構造」を図で表現しています。本理論は井戸氏による「UOSモデル」とその後継理論である「構造化IRFモデル」の改良版であるため、合わせて他二つの理論も見ていくと良いと思います。

UOSモデル
UOSモデルのセッションレポート
構造化IRFモデル
主体性構造モデル

2.4 面白さ・楽しさの分析方法 ROBIN氏


①「発見」②「分析」③「確認」④「応用」の手順で分析を行っていきます。特に②での分析フェイズでは、まず1人で可能な限り深く掘り下げるということが重要だとされています。最初に軽く思いついた分析結果は間違っていることもあるため、浅い分析で終わらせず深く、深く掘り下げることで初めて「応用が可能な意味のある分析」と言えるとのことです。確かに楽しい・面白い体験をした時に「なぜ?」を深く考え続け、自分の言葉で説明できるようになることで、分析の際はもちろん、自分が創作する側に回った際にも役立つものを手に入れられるかもしれませんね。

面白さ・楽しさの分析方法

2.5 「おもしろさ」を生み出す「仕掛け」作りとは何か ~日常から「面白さ」を抽出するゲームデザイン論~ 東山朝日氏


『エースコンバット2』のディレクターの方の講演をまとめたものです。東山氏は「ゲームデザインとは、「おもしろい」と感情を喚起できる「仕組み」を作ること」とし、日常生活や映画などの「おもしろい体験」からこの「仕組み」を発見し、実際にゲームデザインへ落とし込んでいきました。自分の印象的だった体験に対して、どのような「心を動かす仕組み」があるかを見つけ、考えることは普段から取り組めるかもしれませんね。

「おもしろさ」を生み出す「仕掛け」作りとは何か ~日常から「面白さ」を抽出するゲームデザイン論

2.6 ゲームデザイン力を飛躍的に向上させる「実用的な言語化」のやり方 だらねこ氏


「言語化」といっても、「何をどうすればいいのかいまいち分からない」「自分の言語化はしっかり出来ているのかが不安」という人もいるでしょう。本方法は、ゲームを分析する際や仕様を考える際に「良い言語化/使える言語化」が出来るようになることで、より的確に物事を考えられることを目指したものです。特に「使える言語化」と「使えない言語化」の違いの部分は自分自身の体験から「なるほど、確かに」と感心しました。分析に必須な能力である「言語化」に焦点を当てた記事なので、読んでみることをおすすめします。

ゲームデザイン力を飛躍的に向上させる「実用的な言語化」のやり方

2.7 なぜディレクターはUXを分解・言語化しなくてはいけないのか?クソゲーが生まれてしまう原因 かえるD氏


ゲームディレクターのかえるD氏による「UX(ユーザー体験)の分解・言語化方法」を解説した記事です。まず言葉を認識、表現することから、それらと体験を紐づけて言語化するトレーニング、ユーザーセグメントの理解、開発におけるディレクターやプロデューサーの役割などの話まで、幅広く書かれています。また、先ほど紹介したMDAフレームワークについても『ドラゴンクエスト』などを実例に説明されています。終盤に言及されていますが、UXは人と依存関係にあるため、ゲームそのものだけでなく、ゲームをプレイする人間側の方にも目を向けることが重要であるとのこと。これは大切な考え方ですね。

なぜディレクターはUXを分解・言語化しなくてはいけないのか?クソゲーが生まれてしまう原因

3.まとめ

今回の記事では、Web上で読めるゲームの分析法を集めてみました。自分が普段遊んでいるゲームや、過去ハマったゲームを分析してみたい方は、今回紹介した方法でそれぞれ分析してみるといいかもしれませんね。また、オリジナルの分析法を作ってしまうというのも良いと思います。これらの分析法を参考にしながら、自分なりのフレームワークを作ってみてはいかがでしょうか。