サリー便り2000年2月編

 日本は三寒四温、英国は二寒五温といった感じで冬が遠のいていきます。サリー便り1月編は中旬に発送したので、2月編は、1月下旬から始まります。

1月21日<流通は難しいテーマなのか記者がお粗末なのか>

1月23日<プリンター燃ゆ>

1月24日<自習はさせない?、できない?>

1月25日<予感があたっていた>

1月26日<アイスホッケーの試合観戦>

1月27日<息子に対する複雑な思い>

1月28日<コンファランスはやはり・・・・>

1月29日<ダンスは良かったが、席がお粗末>

     <ルールはルールのお国柄>

1月30日<そういえば思い出した、日本の厳格な入国ルール>

1月31日<ドイツ人も皿洗いで洗剤をリンスしないとの有力情報>

2月 2日<今日からERがはじまる>

2月 3日<相撲が日本から消える日を期待する>

2月 4日<文化の厚み>

2月 9日<2週間ぶりに走る>

2月10日<冬が去って・・・・>

2月13日<留学生6名と楽しい時間を・・・・>

2月14日<スペインから届いたローマ字綴りの日本語>

2月15日<英国の公衆電話の不条理>

2月16日<英国礼賛を疑う>

2月17日<赤ちゃんにピアスをつける国>

     <小学校の劇を観賞する>

2月18日<また金曜日の夜が寂しくなる>

<スペイン編>

1月21日<流通は難しいテーマなのか記者がお粗末なのか>

 昨日のGuardian紙によると、毎年恒例の物価が高い都市(dearest cities)調査でロンドンがEUの中で一番、世界で7番目にランキングされたと報じられてあった。当然のように一番は東京だが、その東京の事情を解説する記事(記者はjonathan watts)で、東京の多くのスーパーには小さな手提げの買い物バスケットしかおいていない、商品が高くてたくさん変えないからだろうという、どうしようもなく見当はずれの解説を披露していた(鍋をつつくサラリーマンの写真が掲載され、それにはTucking in in Tokyo, it may be difficult to forget about the billとの解説文が)。

 新聞記事の中には、生活感覚のない、現場も知らないのではないかという記事が多い。特に海外に派遣された記者が書く記事ほど、その傾向が強い気がする。今日の記事も、異なる国で取材をするとき、ものごとを多面的かつ素直に観るために、取材する社会の中に入り、少しでも当該社会にそった記事を書こうとする姿勢が欠如しているとしか思えない。

 流通はその国の文化、風土が集約された場なので、私は、日本でも、流通の論じ方を、新聞や雑誌評価のリトマス試験紙にしている。

 それにしても、この手の記者が日本の事情を本国へ送っているのだから、間違った情報が益々増幅されるわけだ。そう怒る私の話を聞いた妻も、日本に関する記事はどれもピント外れだという。どうしてだと訝っていると、新聞記者に期待する方がおかしいのよと一喝された。他人に対して私より100倍くらい寛容な妻だが、新聞記者には厳しい。

1月23日<プリンター燃ゆ>

 日曜日の朝、二階から妻の悲鳴が聞こた。二階では妻がパソコンで作業中。私は、パソコンがウイルスか何かにやられたのかと直感的に思い、観念して、二階にあがると焦げ臭い。プリンターから黒い煙がモクモク。

 二階は妻のパソコンとプリンターを1つの変圧器で共有、といっても、プリンターを使うときに、パソコンのコンセントを抜いて、代わりにプリンターのコンセントを差し込むといった共有形態。時々、思いもよらないポカをやる妻のことだから、何かの拍子に、日本から持ち込んだプリンターのコンセントを、こちらの250ボルトのコンセントに直接差し込みかねないと、長いつきあいが醸成した第六感で以前から気になっていた。それで、大体は私がその作業をやって、つまり妻にやらせないようにしていたのだが・・・・・・まあ、起こるときはどうやっても事故は起こるということだと、あらためて悟った。

1月24日<自習はさせない?、できない?>

 こちらの小学校は担任の先生がよく休む。しかし、代わりの先生が大体は来てくれるらしい。今日、息子の先生が休まれたが、突然のためか、代行の先生はみえなかったとか。それで、クラスの皆は他の学年のクラスに分散して参加することになったらしい。6年生のおにいちゃん、おねいちゃんが1年生、2年生の教室で彼らと一緒に授業を受けるのである。柔軟といえば柔軟、それで勉強したことになるのだから、いい加減といえばいい加減。ボランティアで学校に入り込んでいる妻は、こちらの子供に自習は無理だからでしょうと言う。

 子供の話だと、日本だと自習になるところだという。自習して騒がないのか、と子供に聞くと、日直が見張っていて騒いだ人を記録するから皆騒がないそうだ。ものすごく日本的な話で、恐ろしい。

 

1月25日<予感があたっていた>

 最近になって、漸くわかりだしたのは、子供の学校の生徒の多くが片親家族であることだ。それで、授業参観日に誰も来ない状態が理解できた。統計によると、結婚して家庭をもっている女性は55%、同居7%、独身17%、離婚や死別で連れ合いがいない女性は20%を占める。

1月26日<アイスホッケーの試合観戦>

 子供がタダ券を学校からもらってきたので(同伴の大人はタダではない、一人7ポンド)、スポーツセンターにアイスホッケーの試合を観に出かける。地元、ギルフォードと近くのまちのプロチーム(二部リーグ)の試合だ。同チームの選手は小学校まわりをやっているらしい。子供の学校に来たときは、警察と一緒に来て、タバコの害について話をしたりアイスホッケーのことを話し、最後にタダ券、ワッペン等を配っていったとか。

 私は大学時代、遊びでアイスホッケーをやっていた(ポジションはキーパー)。試合を生で観るのは、それ以来だ。

 子供の評価はすこぶる高い。特にサッカーに比べて、おもしろいという。なぜかというと、サッカーは、倒されたり足を引っかけられると、選手がオーバーにダメージをアピールする光景が多く、女々しい。その点、アイスホッケーは、その暇を与えないスピーディな試合運びだからだそうだ。

 ちなみに英国らしかったのは、試合の途中で、電光掲示板が動かなくなったこと。時間との勝負が勝敗を大きく決するアイスホッケーにとって、時計がみえない状態での試合など考えられない。どうするかと思っていたら、アナウンスで時刻を知らせ始めた。

1月27日<息子に対する複雑な思い>

 今日、息子がこちらのバスケットクラブに参加したあと、文句をいいいだした。練習試合の時、こっちの人間は全く守ろうとせず、攻撃するだけ。自分だけが一生懸命守ろうとした・・・・・と。

 父親として、複雑な心境だ。既に12才にして、全体の中で自分が何をすべきか見極めて、そのポジションにつこうとする行動に染まっているからだ。日本では、そういう生き方が求められるが、国籍を2つ持ち、日本の国籍をとらないと宣言している息子が、悲しいくらいに日本的な行動パターンを身につけている。

 こちらの人間は、とにかくゴールを決めたくて、自分一人でボールを敵陣に持ち込もうとする。当然、相手の守備を前にどうしようもない状態に陥り、結局ボールを取られてしまう。そのような状況に息子は腹を立てるが、私は、そういう難しい状況に挑む中からスーパースターが生まれるのだ、あるいは、そういう経験から戦略的なチームワークが生まれると説教めいたことをいった。

 はじめから、組織の中での自分のポジションを意識する限り、無謀とも自己中心的ともいえる中で鍛えられ得られる何かを手にすることはできない。そういう育て方をしたつもりはなかったにもかかわらず、息子は既に日本的な組織文化に縛られている。日本の文化の刷り込みに、自分も意識しないうちに手を貸したかもしれないと思うと、複雑な心境だ。一人で世界で生きてゆくために必要なたくましさを既に失ったのではないかと。

1月28日<コンファランスはやはり・・・・>

 11日から4日間開催されたコンファランスでは、評価票が配られ、各プログラムごとの評価をするようになっていた。私は半分もでていないので、評価の資格はないと思い、同票を出さなかった。そしたら、郵便で、提出するようお願い文が来た。その中の文章によると、予想外に集まりが少なかったと自己分析してあった。よせばいいのに、私なりのコメントを滲ませた文を添えて、数日後に評価票を送った。妻曰く、素直に出せばいいのに、余計なことを書いたり妙な関わりをつくるような文を書くのだからと。英語で書くと慣れていないので、どうしても表現がストレートになると言い訳するが、私のパーソナリティのなすところであることは妻もお見通し。

1月29

<ダンスは良かったが、席がお粗末>

 ロンドンへダンスを観にTheatre Royal Drury Laneへ出向く。ダンスは私の守備範囲ではないが、都市観光の実践を心がけているので、これも仕事と思い参加する。出し物は"Dancing on Dangerous Ground."、昨年日本で好評を博したRiverdanceのリードダンサー、Jean ButlerColin Dunneがリードダンサーをつとめる。アイリッシュダンスの妙は楽しめたが、座席の間隔が狭く、苦しい姿勢での観賞にはちょっと参った。

 パンフレットを読むと、出演した演奏グループは、その前の週にロンドンのパブまで聴きに行こうとしたグループだったこと、Jeanの方はリバダンスで名声を不動のものにする前、チーフタンズの公演旅行に付いてバックで踊っていたことがわかった。不思議な因縁を感じる。帰りは、ロンドンの中華街で夕食を食べて帰る。

<ルールはルールのお国柄>

 中華街はLSEに在籍中のK君に案内してもらった。彼から聞いた話を1つ紹介しておくと、彼のマンションは駐車の場所が決まっていないので、来客等で一杯になると居住者でも敷地内に駐車できないらしい。そういう日がたまたまあったとき、仕方なくマンション敷地内の駐車停止の場所にとめていたら、しっかり駐車禁止で管理会社から70ポンドとられたそうでである。ルールはルールで「例外なし」らしい。様々の場面で英国のいい加減さをいつも目にしているが、こういうところだけ妙にしっかりしている。

1月30日<そういえば思い出した、日本の厳格な入国ルール>

 今日の新聞によると、マイク・タイソンが昨晩の試合で勝ったとか。2週間前に、英国に入るときから、そして移動する各地で多くの話題を提供したマイク・タイソンの滞在も、これで終わりとなった。タイソンの入国に際しては、あのような前科がある人間を入国させていいのかとマスコミが騒いだ。丁度、英国の武器輸出が問題になっている時でもあり対外的な倫理規定の見直しとリンクさせる形で、また労働党がタイソンの興行者と関係しているのではないかとの憶測のもと、タイソンの入国問題が批判的に取り上げられた(逆に、昨年は、名前がでてこないが、米国の女性歌手が麻薬所持の疑いでヒースロー空港で取り調べを受け、憤怒の形相で米国へ舞い戻った)。

 それで思い出したのが、かなり前に、サッカーの英雄的な選手、マラドーラの入国を、麻薬常習か何かの理由で日本が入国させなかった一件である。そのとき、国際サッカー連盟のトップが日本の仕打ちをサッカー低開発国とかなんとかいって批判したし、国内では、こういうときに首相が大局的な見地から入国を許可させることで日本の株があがる等の意見がでたように記憶する。しかし、いまあらためて思うのは、あれは、誰であろうと、それなりに筋が通っていればルールはルールとして厳格に適用する倫理観、職業観のあらわれだったということだ。ここ10年の間に、そのような倫理観およびそれを支えとする現場の志気は急速に薄れていった気がする。英国のタイソンに対するなし崩し的な対応が、産業革命以来の長期に渡る経済成長を謳歌している(GDPは92年の第二四半期以降、30期連続でプラスの成長を遂げている)ことと関係しているとしたら、英国の経済成長もそろそろ終わりに近いのかもしれない。

1月31日<ドイツ人も皿洗いで洗剤をリンスしないとの有力情報>

 東京で企画・調査会社を経営するK氏から次のような有力情報がメールで送られてきた。

<<皿洗いの件ですが、ドイツ人も一般にリンスせずに食器を洗うみたいです。シンクに、2%(だったと思う)程度の洗剤をいれて薄目の水溶液をつくる。お皿をひたして、後は拭き取るだけ。この2%がドイツ人に言わせると安全と清潔の合理的なバランスだとか。20年近くドイツに住んで、最近イタリアに移り住んだ日本人カメラマンが、先日も、あれは馴染めなっかったとつぶやいていた>>

 私が知っていたドイツの方は例外だったのである。妻の母はオーストラリアでは珍しく洗剤で洗った食器をリンスすると前のサリー便りで書いたが、妻に詳しく聞くと、洗剤をきれいに洗い流すのは父方の祖母の教えで、母方からきた習慣ではないと。やはり文化・習慣の問題だけあって一筋縄ではいかない。

2月2日<今日からERがはじまる>

 今日からERがはじまる。楽しみだ。日本ではERはNHK、Xファイルは民放だったが、英国では逆。果たしてドラマのテンポの良さがCMで失われるか否か・・・・・。ちなみに、ERは水曜日の9時から、Xファイルも同じ水曜日の10時過ぎから放映される。同じプロデューサーの話題作が2本続けてみれる水曜日は、私にとってゴールデンウエンズデイである。

2月3日<相撲が日本から消える日を期待する>

 相撲の八百長の件が今日の新聞の記事となっていた。昔から日本的諸悪の根元が集約されたスポーツだと感じ、国技でもないのに国技的な装いをちらつかせる「せこさ」に醜さを感じ、にもかかわらず、なぜか人気があるので、そのことが無性に腹立たしく、相撲が絡む話には、理性をこえて拒絶反応を示していた。それだけに、異国で眺める相撲凋落の記事は痛快そのものである。私が帰国する頃は、相撲が、少なくともNHKをはじめとする通常の地上波局の番組や新聞から消えていることを夢見ておきたい。

2月4日<文化の厚み>

 車で3040分のBasingstokeまで、バイオリンの協演を聴きに行く。中心の駅に近接したホールが会場。途中、道に迷ったので、7時45分の開演まで1時間半しか時間がなかったが、街を散策、街中のパブで夕食をとる。

 演奏は4人が入れ替わり立ち替わり演奏し、最後に皆で協演するといった流れ。楽器はバイオリンだけなので、単調さは最後まで克服できなかった。日本だと100名の集客も難しいところだろうが、200名をこえる観客が集まった。有名だろうとなかろうと関係なく、とにかく聞きに行こうとする層の厚さが英国の文化的な興行を支えている。人口に占める比率は少ないはずの、その人たちの高いアクティビティが文化の厚みを生みだしているのだろう。

2月9日<2週間ぶりに走る>

時間的余裕があるにもかかわらず、ジョギングの回数がなかなか増えない。今年は元旦から走り、意識改革を図ったのだが、1月は8回のみ。目標の10回に達しなかった(8kmちょっとを走るので月10回走ると年間1000kmを走破できる)。原稿を書いていると、あっという間に時間が過ぎ、気づいたら昼過ぎで、何となく走る気が萎えてしまう。夕方走ればいいのだが、歩道を走るコースだけに、人通りが多くなる夕方は敬遠してしまう。今日は2週間ぶりに走った。情けないが、途中で足がくたびれてしまい、2、3度立ち止まった。知力はもうあてにできないので、あとは体力と気力だけと悟っているのだが、その体力と気力も風前の灯火だ。

2月10日<冬が去って・・・・>

 1月末から急速に冬の雰囲気が遠のいている。といって春ではないが、日が射すと気持ちがいい。暖冬だったせいもあるが、予想外に英国の冬は寒くなかった。それで気づいたのは、子供の下に着る制服は半袖しかないないことだ。夏は半袖のまま、冬は半袖の上に制服のセーターを着ているのだから、上に何を着るかを別にすると、年間を通して半袖を着て学校へ通っているわけだ。ちなみに、隣の子供は、気温が2、3度の寒い日もTシャツで街まででかける。そして、よく風邪をひいている。

2月13日<留学生6名と楽しい時間を・・・・>

 留学生のWさんが帰国されるというので、帰国パーティを昼過ぎからはじめる。サリー大の留学生5名に加え、レディング大のY氏も参加。Y氏は某ラーメンメーカーで商品開発に携わっていた方で、今回はインド風カレーを大人8人、子供2人分、料理していただいた。私はいつものように飲み過ぎて、途中2時間ほど椅子の上で眠ってしまった。

 Y氏の話でおもしろかったのは、インドに合弁会社の管理スタッフとして滞在していた折、工場の衛生管理のためにトイレでトイレットペーパーを使わせようとしたときの話。インド人と日本人のお尻のどちらが清潔かを討論したが、水で洗い流す方がきれいになるとの主張に日本サイドは納得せざるを得なかった。そこで、トイレットペーパー使用の無理強いはやめ、手をちゃんと消毒液で洗うといった妥協案で問題を解決したとか。Y氏自身、実践した経験だと、水と手を使うことできれいに洗い流せるらしい。

2月14日<スペインから届いたローマ字綴りの日本語>

 2月20日からスペインに旅する。そのこともあり、スペインの日本大使館に勤務するスペイン人の女性を、こちらの留学生に紹介してもらった。その彼女から、今日メールが届いた。それは何と、ローマ字綴りの日本語文章だ。たとえば、spainsupeinと書いてある。日本語でのメール送受信が不可能だからだと思い、こちらもローマ字綴りの日本語で返事を書いた。書いてみると、これはこれで大変。

 ローマ字綴りの日本語をかつて送ったとき、相手から文字化けしたとクレームが届いたことがある。果たしてちゃんと届くか不安だな・・・・・・と思っていたら、スペインのケンブリッジプレスに勤める彼女の旦那様から、英語でメールが届いた。文字化けしたためか、ローマ字綴りの日本語を操るのに疲れたためかは、わからない。

2月15日<英国の公衆電話の不条理>

 日本の電話代は高いが、公衆電話サービスは世界最高だと、海外に出向くといつも痛感する。米国の公衆電話は世界一という記事や文章を読んだことがあるが、何を勘違いしているのだと思う。長距離電話をかけるとき、日本なら10円入れたら10円分かかる。しかし、米国だとそうはいかない。最近では、暗証番号入力のプリペイド型電話サービスが普及していると反論されそうだが、ちょっと滞在するだけの旅人にとって、硬貨で自由に電話をかけられない不便さに変わりはない。

 英国の公衆電話も非常に不便である。これも挙げだすとキリがない。中でも最高に理不尽だと思われるのが、相手に電話したものの留守でつながってないのに、お金が返却されないことだ。「この電話はお釣りが出ない」との警告文は書いてあるが、「つながらなくてもお金は返却しない」とは書いていない。何か私たちが気づいていない、ちょっとした工夫なり操作が必要なのかもしれないが、いまだに不明である。

2月16日<英国礼賛を疑う>

 1週間か10日に一度、大学の図書館においてある朝日新聞を読む。記憶していないが、2月何日かの記事に次のような記載があった。ロンドンのバスの中で、子供がラフな口のききかたをしたとき、車掌さんがそれをたしなめて、プリーズということを忘れないようにと諭した、そのような文化の伝承が日本にはない云々といった記事だった。しかし、少なくとも、いま現在私が知る限り、そのような光景にあった例しはないし、そもそも、そのような車掌さんにあったこともない。どちらかというと、多く見るのは、非常に機械的に職務をこなし、そればかりか、禁煙であるはずのバス車内で、人が少ないと率先してタバコを吸うような車掌がいるくらいの印象しかない。

 昔から、紳士の国として英国を礼賛する論調が日本では多い。それは嘘ではないが、平均値で言えば、あるいは多数派がどちらかというと、非紳士的な振る舞いの方が多い。家内にいわせると、ルール、ルールとやかましく言わないとどうしようもない国、秩序が保たれない国が英国だと。だから、紳士の国という、現実から大きく乖離した自国のイメージを、必要以上にアピールする必要があったのかもしれない。あるいは、前にも書いたが、一握りのエリートがその国を代表できる国と、そうではない国の違いかもしれない。そうなら、英国礼賛論は、日本にとって余り参考にならない論となる。

 正直なところ、私も英国礼賛論を部分的に信じていた口だが、それが間違いであったことを、こちらで生活して悟った。無論、自国を論じる際に、他国の例を実態上に理想化する術は、日本に限ったことではない。

2月17日

<赤ちゃんにピアスをつける国>

 娘が念願のピアスを昨年末にした。帰国してから苦労するだろう。今日、たまたま、スペインの友人をもつ留学生と話をしていたら、あちらでは、女の子が生まれたら、母親あるいは家族から子供へのプレゼントとしてピアスが送られ、生まれたばかりの頃から、ピアスをするらしい。これは知らなかった。昔からの伝統が生きているネイティブの中には、ピアスを始め何かで自分を装飾することが珍しくない。ということは、日本の若者のピアス志向も先祖帰りということか・・・・・。

<小学校の劇を観賞する>

 2週間ほど前から、子供が通う小学校で劇の練習が始まった。出し物はキャプテン・クック。その開演は、今週の火曜日の昼間、水・木曜日の夕方7時からの3回。今日、木曜日、千秋楽の日に見に行った。1年生から6年生が総出演する、楽しい劇に仕上がっている。ただ、子供に聞くと、夜だと来ない子供もいるらしい。びっくりしたのは、ちゃんと、中休みをとること。結局、7時に始まり、終わったのは8時半。日本では最近、劇をしなくなったというが、確かにうちの子供が通う小学校でも音楽会はあっても、劇はない。人数が多いだけに、全員参加の体制が取れないからだろうか。

  

2月18日<また金曜日の夜が寂しくなる>

金曜日の夜の楽しみは、BBC2のThe League of Gentlemenをみること。以前のメールにも書いたように、人種・階層・性差別など何でもありの、現代版モンティパイソン(Independent紙の表現を借りると、simpletonssadistfetishistsxenophobesthugspsychopathsnudistosebleederskidnapperstoad worshippersmass-murderersがわんさか登場する番組だ)。それが今日で、終わる。第二シリーズのファイナル。英国で一番の楽しみの1つが消えてしまう。

<スペイン編>

 2月20日から3月1日までスペインを旅した。Madrid(2泊)→Toledo→とある町(1泊)→Alhama de Granada(3泊)→Malaga→とある町(1泊)→GibraltaCadizSevilla(2泊)→Villanueva(1泊)→Madrid11日間かけて、約2300kmを車で走った。

<マドリッドは怖い街?>

 留学生の知人で、マドリッドの日本大使館に勤めるスペインの方が送ってくれた、マドリッドの治安に関するレポートによると、マドリッドの治安は悪い、暴力も辞さない強盗が出没するとある。マドリッド空港について、タクシーでまっすぐホテルへ向かうのが一番安全だが、ちょっと冒険してみようということで、バスで都心へ向かう。乗ってみると一人100円くらいで、15分ほどで都心に着いた。昼間ならバスをお勧めする。

 スポーツバックと小型ボストンバックがわれわれの大きな荷物。はじめての街に着いたとき、一人なら私は闇雲に歩き出す。大体、これで失敗をする。今回は子供が居るので、最短距離でホテルにたどり着く必要がある。地図をみ、方向と道路名を確かめながら歩き出す。結果的にほとんど迷うことなく、1kmちょっと歩いてホテルにたどり着いた。

 途中、事件に遭遇した。横断歩道で待っていると、片側3車線の交通量が多い道の向こう側で、逃げる男と追っかける男を発見。双方ともスペイン人らしいので、喧嘩かと思っていたら、後ろから東洋系の男女が追ってきた。追われていた男性の片手には黒いバック。彼は車を巧みに避けながら道路を渡り、地下鉄の駅に逃げ込む。気が付くと、もう一人仲間と思われる男も危険を冒しながら道路を渡り、別の地下鉄の出入り口に逃げ込んでいった。信号が青になって、東洋系の男女が必死に追っかけてきた。

 多分、女性のバックが強奪されたのであろう。後になって思うと、バッグをもっていた強盗は私たちの側を通り抜けていったので、足を引っかけることはできた。彼が強盗だとわかっていたなら・・・・。東洋系の男女は無言だった。こういうとき、日本語でも英語でもいいから、「強盗」なり「そいつを捕まえてくれ」といった方がいいのか。難しいところだ。

 マドリッドには2泊し、夜も街を歩いたが、幸いにも被害には遭わなかった。運が良かっただけかもしれないし、家族だと襲いにくいためかもしれない。シーズンオフのせいもあるだろう。

<観光客目当ての飲食店の評価>

スペインの楽しみは食べること、飲むこと。それだけに店の選択が旅全体の評価を左右する。どうしたらいい店を見つけられるか?言葉ができれば多くの不確定要素が除去できるが、われわれは片言のスペイン語すら話せない状況。

 英語ならまだしも、日本語のメニューまである飲食店は完全に観光客目当て。それがおいしくないかというと、そうではない。観光客を目当てにする店ほど、おいしい料理を食べられる確率が高いことをスペインでは感じた(理由はこういうことだろう。スペインではどこの店に入っても大体満足できる、英語、日本語のメニューがある、店の方が英語が話せると、自分が食べたい、相手がお勧めする料理に当たる確率が高くなる)。

 ちなみに、小さな村の1つしかないレストランや、外観は一見バーでも中にレストランコーナーがある店はお勧めだ。

<スエスタ昼寝ルールの怪、快>

 日中、店が閉まり、昼食を長く取って昼寝をするスエスタのことは聞いたり読んだりしていた。しかし、体験して、その凄さに、日本に生まれ育った私はもちろん、日本よりものんびりしているオーストラリアで生まれ育った妻も、最初は唖然。そして、あらためて、世の中に価値観が異なる国や人がいることを思い知る。

 スエスタの関係で一番驚いたのは、その間、駐車場の料金がタダになること。たとえば、午後1時から夕方5時まで、タダになる。日本のような、はじめに課金ありきの国からみると、その発想がまず理解できなかった。でも、国民すべてがスエスタを享受しているのだから、タダにするのが当たり前と考えると、非常に理にかなっている。

<駐車ルール>

 都市の大きさや時間帯にもよるが、予想以上に、駐車は問題なかった。空いているスペースを見つけたらとにかく入って、それから周りをみわたしチェックすればいい。白の点線なら100%問題なし。スエスタの間は、大体どこに停めても大丈夫のようだし、この時間帯は中心部の車も減るので停めやすい。それでもダメだったら、買い物施設を目印に、そこの駐車場に停めればいい。

 ちなみに、セビラでみたのだが、無料駐車のエリアや時間帯にもかかわらず、普通の人間が手を振って、空きスペースを知らせ誘導している。私たちは怪しいと思い利用しなかったが、あとで観察していると現地の人が利用している。チップを100ペスタ(70円)くらい渡せばよさそうだ(チップをやらないと車に傷がついていることもあるという)。

<ハンドルロックの少なさは安全な証拠?>

 英国では、車盗難予防のハンドルロックを施している車がやたら多い。また、誤作動を起こしてアラームが鳴っている光景も珍しくない。スペインでは、ゼロではないが、ハンドルロックを施してある車がほとんどなかったし、アラームも聞かなかった。安全なのだろうか?

<不思議なことに車で道に迷わなかった>

 英国では、多くの都市で、都心に入る際によく道に迷った。ところが、スペインでは、ほとんど迷っていない。下手に文字が読めない分、都心を示すel centroだけを頼りに運転したことが良かったのだろう。人生の教訓としても示唆的だ。

<車の運転は荒くない>

 車の運転は、予想外に荒くなかった。車が少ないことと、スピードをだしていないことが大きな要因。英国では、気が狂ったとしか思えないスピードで街中を運転する車が珍しくない。時速120km以上で走っていても、車間距離が少しでも空いていると入ってくる。というのも、基本的に走行中はブレーキを使わない運転スタイルなので、他の車を回避するとき、ハンドル操作のみで対処するからだ。これはドイツなどでも同じ。車間距離を詰めてくる車が多いので、慣れないと後ろがやたら気になる。その手の車を追い払いたいときは、ちょっと危険だが、ブレーキを踏んでやるといい。そういう状況でブレーキを踏むなんて相手には信じられないので、怖がって後ろに大きく退くか、他の車線に退避していく。

<英国と異なる運転ルール>

 英国では信号が赤から黄色に点滅し始めると、車はスタートする。郷にいれば郷に従えの教え通り、私もそれに従っているが、少し運転して気づいたのは、たとえば歩行者用の信号はまだ青点滅の状態にある(留学生のD君によると、交通規則では歩行者は青点滅になると渡ってはいけないらしい)。違法ではないが、黄色点滅だけをみて車を発進させると、まだ横断歩道にいる歩行者をひきかねない。その点、スペインは青になってから車は発進する。また、高速道路などでメイン道路に斜めに入っていくとき、英国ならウインカーでサインを出しておけば、後ろを気にせず、入っていける。後ろからくる車の方が、回避する習慣になっている感じだ。スペインでは、車が来ているなら、停まって、続車車がないことを確認してから入っていく。

<休日の日は家族が着飾って街に出る>

 休日は、家族揃って着飾って、街にでる習慣があるみたい。子供たちはお出かけようのおしゃれをしている。昔の日本を彷彿とさせる光景である。

<イヤリングをしている男性は希>

 ラテン=派手という思いこみがあるので、男性もイヤリングやブレスレットをしていると予想していたら、ほとんど見かけない。イヤリングをしている男性は、その手の男性か、ジプシー系の男性くらいだった。人は勝手に誤ったイメージをつくりあげるというが、まさにそうであった。

<甘い私が悪いのか、相手がうまいのか>

 海外で、近寄ってくる人間に対しては、容赦なく追い払うことがベスト。これは長年、欧州に駐在していらっしゃるK氏の教え。5年前、その光景をみたとき、そこまで邪険に扱うことはないと感じたが、それが私の甘さであることを、その後、2度ほど思い知った経験がある。スペインで多くみかけたのは、ローズマリーなどどこにでも咲いている草木の枝を使って、小金をせしめるジプシーたち。信じられないことに私もやられた。

 丁度、妻と娘を待っているとき、彼女らをみつけた私の視線の先に、ジプシーがあらわれ、小枝をさしだす。不意を付かれたとしかいいようがないが、それを手にした。あとは、訳の分からないお呪いを手のひらの上でして、お礼にお金をくれという。腹が立ったが、100ペスタだけわたす。相手はもっとというが、さすがにその要求には応えなかった。

 端で見ていた子供や妻の話だと、だんだんジプシーの顔が険しくなていったそうだ。それに負けると、次々と小金を巻き上げられることになる。それにしても「俺は甘いなあ」と、悔しいやら腹立たしいやらの一幕だった。

<グラナダは正直言ってお勧めしない>

 グラナダは人気の観光スポットらしいが、いまいち、おもしろくない都市だと感じた。グラナダに行くなら、すぐ東側にそびえる標高3500mのシエラネバタにいった方がいい。車で頂上まで登れるるし、春先までスキーができる。

<皆、パエリヤを食べている、しかしパエリヤは前菜らしい>

 何を食べたいかと子供にきくと、とにかくパエリヤ。パエリヤを食べれそうな店を探しまわった。最終日、マドリッド空港に帰る直前、スペインで最後の食事をとろうと、小さな都市に入ったが、それらしい店を発見できず。仕方なく、高速道路に戻り、少し走ってから小さな町に降りた。地元相手のバーに入って、幸いにもおいしいパエリヤを食べれたが、そこでみていると、皆パエリヤを食べている。食事ができるまでバーで飲んでいて、パエリヤができるとレストランの席につく。ところが、パエリヤのあとに、メインディッシュも食べているのだ。観光地のレストランではパエリヤはメインディッシュ的な扱いだが、小さな町のバーでは前菜となっていた。

<入国審査の時、張り付けてくれない半紙を無くさないように>

 入国審査は、正直言って、無愛想につきる。ここで入国審査用紙の半券を手渡されるが、パスポートに張り付けてはくれない。いらないのかと思っていたら、出国時にちゃんと審査員はとっていった。無くしていたら、どうなったのだろうか。

<ワインの赤は外れが少ない、飲み過ぎても頭が痛くならない>

 ワインはよく飲んだ。白は舌に合わないものが多かったが、赤は当たりはずれがなかった。しかも、のみすぎても頭が痛くならない。こちらの人もよく飲むが、子供の観察によると、ミネラルウォーターでワインを割って飲む人もいたらしい。

<シャワー、トイレ付きツインルームの相場は3000円くらい>

 宿の半分は、ホテルよりも格が1つ下のHostalを利用した。シャワー、トイレ付きで4000ペスタ前後。お湯が朝方出ないところもあったが、まあ問題はない。シーズンオフだったせいもあるのだろうが、飛び込みでスムーズに宿はとれた。

<多くの教会は、英国と違って、タダで拝観できる>

 英国では教会の中に入る際に、入場料やお布施を要求される。それが、スペインではほとんどなかった。例外は、コルドバのモスクだけ。観光シーズンになれば、変わってくるのかもしれないが。

<英国領ジブラルタルはパスしてもいい場所>

 英国領ジブラルタルも観光スポットらしいが、パスしてもいいところ。まあ、ここだけにしかない切手や貨幣を収集したい向きにはお勧めだが。

<毎日晴れ、自転車で回遊する老夫婦の話だと14日間晴れ>

 途中の宿で、2人乗り自転車で14日間もスペインを回っているという老夫婦にあう。こういうアドベンチャー夫婦のいるところが、欧米の懐の深さだと思う。ざっと計算すると、1000キロ以上、あるいは2000キロ近い距離を走っているようだ。14日間晴れた日が続いているとのことだが、われわれの11日間の旅も毎日晴れの天気に恵まれた。

<とにかく楽しかった旅>

 旅に出ると、疲れと飽きがでて、無性に家に帰りたくなることがある。今回の旅では、それがまったく無かった。子供も「おもしろくない」とほとんど言わなかった。天気の良さと、食べ物の楽しみがその大きな要因だろう。

 お陰で、英国に戻ってきても、ぼーとしている。新聞も読む気がせず、英語を受け付けない深層心理が働いている感じだ。4月にまたスペインへ出かける腹づもりだが、家族皆が大賛成だ。